賃貸借 第六条(敷金) of 契約書式

敷 金


第6条(敷金)
 乙は、敷金として賃料の●ヶ月相当額を甲に差入れるものとする。この金員には利子を付せず、本契約が終了又は解除により返還する。乙に延滞賃料又は損害賠償金がある時はその合計額を差し引いた残高を、本件建物の明渡しの日より●ヶ月以内に返還する。

 敷金に関する条項です。
 金員を預かりますから、その金員に利息を付けるかどうかを決めておきます。事務所の賃貸借契約で、預かり金の額が月額賃料の何十倍もになる場合は、預かり金というよりも借入金という性質の金員という認識で利息を付けることが通常です。その場合の預かり金は敷金ではなく、保証金とか建築協力金などとよんでいます。
 月額賃料が高額な場合、賃料支払いの担保として、敷金等の現金を預かるのではなく、抵当権の設定という事例もあります。

 敷金の返還は、賃借人に損害賠償(原状回復)義務があるかないかの判断をするので、明渡しの日より日にちをおいて返還するため、敷金の返還は同時履行(敷金を返してくれたら明け渡す)の関係ではありません。

 そして、この損害賠償すべき範囲で賃貸人と賃借人との間で争いが生じることが間々あります。賃借人は明け渡した後は賃借人の立場でなくなり、賃貸人に我慢することなく言いたいことが言えるので、自分の責任ではない損害賠償金(原状回復費用)を差し引かれたら『何も壊していないんだから預けている敷金は全額返せ』と声を上げ、賃貸人はというと、明け渡された後も大家気分でいることが多く、預かった金は自分のものと、次の店子のために壁紙から畳まですっかり綺麗にして『貸していた部屋を元に戻すのに預かっていた敷金では足りなかったけど、まあ敷金の範囲で許してやるので返す敷金なんかない』と答えるので、平成10年の民事訴訟法大改正の中に新たに盛り込まれた”少額訴訟”として提訴されることになります。訴額の上限額30万円が平成15年の改正(平成16年4月1日施行)で60万円となり、住宅の敷金返還請求事件として使える金額となりました。

 当初の少額訴訟申立件数の半数近くが敷金返還事件ということで、かつての大家と店子との間にはずいぶんとマグマが溜まっていたようです。

 裁判とならなくても、住宅相談窓口、消費者相談窓口には敷金返還にからむ原状回復義務の範囲については大きな問題としてあり続けていたところ、16年2月に国土交通省住宅局から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が出され、東京都はそのガイドラインにそって「賃貸住宅紛争防止条例」(平成16年10月1日施行)を制定しました。
該当するのは、東京都の賃貸住宅で、宅地建物取引業者が仲介または代理でかかわる物件です。東京都の取引業者でなくても東京都の賃貸住宅を扱う場合は都条例に拘束されます。